
こんにちは!川嵜です。
時々受ける質問にお答えしますね!
遺言と家族信託は、どちらがいいのか?
また、遺言と比べて家族信託にはデメリットはないのでしょうか?
ケースバイケースと言えるでしょう。
遺言も家族信託も特徴があるので、その特徴を上手く使う必要がありますね。
※ ちなみに、「遺書」と「遺言」は言葉は似ていますが全く別物です。(汗)
言い間違えないように、気をつけてくださいね。
自宅と、アパートと、土地をお持ちのお父さん。
自分が亡くなったら、
・アパートは妻に
・自宅は長男に
・土地(駐車場)は長女に
渡したいと思っています。
この場合、遺言がいいのでしょうか?
家族信託がいいのでしょうか?
遺言のメリットは簡単に作れるところ
遺言のメリットは手軽なところです。
手書きでも作れます。
アパートの土地建物は妻に、 令和○年○月○日 |
全て手書きで書けば、
こんな、簡単な内容でも有効です。
もちろん公正証書にすればさらに確実でしょう。
あ、物件はちゃんとわかるように書いてくださいね。
(これすごく重要です)
そして、お父さんが亡くなったら、その内容のとおり、
・アパートは妻に
・自宅は長男に
・土地は長女に
相続されます。
最近は、いろいろ法律が改正されて遺言が作りやすくなっています。
物件はワープロ打ちでもいいとか、手書きの遺言は法務局で預かってくれる※とか。
※ 2020年7月から実施される予定です。
遺言のメリットは、手軽に作れるところですね。
もちろん、「遺言を書く」という決心は必要ですが。
遺言と比べた家族信託のデメリット
一方で、遺言と比べると家族信託のデメリットはちょっと大がかりになることです。
家族信託は、
管理する人(「受託者」といいます)を定めて、
家族信託契約書を作ります。
まずは、管理する人が必要な点です。
(逆に言えば、家族信託は、管理者つきで財産を渡せる点がメリットですが。)
家族信託の契約書には、
・信託をする目的 ・管理する人(受託者) ・管理の方針(売ってもいいとか、他人に貸してもいいとか) ・信託が終わるタイミング ・信託の変更方法 ・最後に財産をもらう人 などなど |
を書かなければなりません。
これだけでも大変ですね(汗)。
そしたら、その後は、信託の登記です。
アパートや自宅、土地を管理する人(受託者)に名義を移す登記をします。
その後も、
アパートなら大家さんが受託者に変わるので、入居者にお知らせをしたり、 火災保険も名義変更が必要だったり、 不動産取得税の通知が来るのでその対応をしたり、 |
とか。
家族信託はけっこう大がかりになります。
この点が家族信託のデメリットと言えるでしょう。
でも、遺言にもデメリットが
一方で、遺言のデメリットは、お父さんが亡くならないと効力が発生しないこと。
もう一度言いますよ
お父さんが亡くならないと、効力が発生しません。
つまり、お父さんが認知症になったときは、遺言では対処のしようはありません。
お父さんやが認知症になったらアパートの管理はどうするか、という問題が出ます。
・入居の賃貸借契約が、できなくなります。 ・賃料の口座からお金を出せなくなります。 ・入居者が家賃未払いでも、法的手続きができなくなります。 |
認知症で判断力がなくなると、このような手続きができなくなってしまうのです。
そのためには成年後見人が必要になりますが、これもちょっと使うのをためらう制度です。
成年後見人とは、お父さんが判断力がなくなり、事務手続きができないので、
代わりに事務手続きを行う人です。
家庭裁判所に申し立てをして、成年後見人を選んでもらいます。
しかし、成年後見人には次のような問題があります。
・基本的には第三者が選ばれます。 ・そのため、第三者に費用が一生かかります(平均年36万円) ・現状維持が基本なので、大規模な修繕は難しいです ・お金はお父さんのために使うのが基本で、家族のために使うのは難しいです。 ・歯ブラシ一本買うのも、後見人の了解が必要です。 |
このように、遺言では、お父さんが認知症になったとき、管理ができなくなり、
その場合の対処の成年後見人は、ちょっと避けたい制度なのです。
それから、お父さんが亡くなった後、お母さんが相続しても、
お母さんが認知症ならどうなるのでしょうか?
やはり、管理で困ってしまうでしょう。
また、別な視点では、遺言は、ちょっとのことで無効になりやすいです。
特に自筆で書く場合は、専門家から確認してもらうことは、絶対必要でしょう。
このように、遺言は
・死亡するまで、発効しないので、認知症になると困ってしまう。 ・相続した人が認知症でもやはり困ってしまう。 ・ちょっとのことで無効になりやすい。 |
というデメリットがあります。
家族信託のメリット
家族信託は、設定がちょっと大がかりになる点はお話ししましたが、認知症については、絶大な効果を発揮します。
アパートを長男に信託します。
そうすると、管理は長男が引き受けることになります。
つまり長男が大家さんです。
そして、賃料をもらえる権利を
父 ⇒ 母 ⇒ 子供たち
というように設定すれば、いいのです。
管理は、長男がやってくれますから、
お父さんが認知症になっても、大丈夫です。 お母さんが認知症になっても、大丈夫です。 最後には、子供たちにアパートを継がせることもできます。 |
このように、信託は管理者つきで財産を渡せることが最大の特徴です。
遺言でないとできなことも・・・
一方の遺言も、遺言でないとできないこともあります。
例えば、祭祀主催者の指定
「○○家の墓は○○が守るように」
というものですね。
家族信託ではこのようなことは指定できません。
他には、子供の認知。
「○○の子は、わしの子だから認知する」
なんてことも遺言でないとできません。
(あまりいい話ではないですが・・・)
特徴をつかんで、使いこなすことがカギ
このように、遺言にしても家族信託にしても一長一短があります。
家族信託でないとできないこともありますし、遺言でないとできないこともあります。
ですから、自分が実現したいことを見極めて、
それぞれの制度を使い分けることが重要ですね。
まとめ
遺言のメリット・デメリット
メリット |
・手軽に作れる。 ・遺言にしかできないことがある (祭祀主催者の指定 など) |
デメリット |
・死亡するまで効力が発生しない ・認知症になると、管理で困ってしまう |
家族信託のメリット・デメリット
メリット |
・認知症になったときも対応可能 ・財産をもらう人が認知症になっても大丈夫 (管理者つきで財産を渡せる) |
デメリット | ・作成するのが大変 |
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