A子さん(50代)は、お母さんと二人暮らし。
お父さんは5年前に他界。

同居はしていますが、
お母さんとはそりが合わず、普段は、お母さんと会話をするのを苦痛に感じていました。

母に異変が?! A子さんはどうしたらいい?

親子のそりは合わなくても、それまでお母さんは、元気に過ごしていました。
自分で買い物も行っていましたし、介護認定も受けていません。

ところがお母さんに異変が突然現れます。

1ヶ月くらい前から、夜の2時、3時に「通帳がない」と騒ぐようになりました。

A子さんは、日中は仕事をしています。
1度くらいならまだしも、毎晩のようにお母さんから
「通帳がない」、「財布がない」と起こされると、大変です。

同居している家族としては対応せざるを得ません。

とうとう母も認知症か!

夜中に度々起こされて、A子さんも怒ってはいけないことは重々承知していますが、つい怒鳴り声を出してしまいます。
「またなの? もう明日仕事なんだから、いい加減にして!」

その後、自分を責めてしまうことも。

変わりゆくお母さん。
たとえ、そりが合わなくても、そこは肉親です。

お母さんが、これまでのお母さんでなくなって行く姿を見て、A子さんも、とてもつらいと感じるようになりました。

A子さんは、体力的にも精神的にも限界になってきました。

お母さんに介護が必要になる時期かもしれません。

A子さんはどうしたらいいのでしょうか?

考える点は2つ

・お母さんとA子さんの生活のサポート
・お母さんのお金のやりくり

お母さんとA子さんの生活のサポート

このまま行くと、A子さんも体力的、精神的に限界を超えてしまいます。
そうなれば、共倒れ。これは避けなければなりません。

まずは、お近くの「地域包括支援センター」に相談を行くことをオススメします。

地域包括支援センターとは
高齢者のみなさんが、住み慣れた町で、安心して暮らしていけるように
・介護
・福祉
・健康
・医療
など、様々な面からサポートしていく組織です。

中学校区に一つずつありますので、必ずあなたのお近くにも地域包括支援センターがありますよ。

全国どこでも相談は無料ですので、まずはお気軽に相談してみてください。

そうすれば、

・お母さんへの対応方法(介護の要否や介護方法も含めて)
・お母さんの健康面
・A子さんの精神的・体力的負担を減らす方法

など、親身に相談にのってくれると思います。

これまで一生懸命、がんばってこられたかもしれませんが、
イザとなったら、人に頼ってもいいと思います。

まさに、今は、その「イザ」となったときです。

また、お母さんが認知症だとしても、最近は認知症の進行を遅らせる良い薬がでています。

お医者さんに行くべきかも、地域包括支援センターでアドバイスもらえると思います。

一方で、もう一つ考えておくことがあります。

お母さんのお金のやり繰りをどうするか。

お母さんのお金のやりくり

お母さんが認知症になり、自分でいろいろできなくなると困ることは、お金のやり繰りができなくなること。

お母さんの口座にはお金があっても、
介護や医療のお金を、お母さんの口座から引き出せなくなる可能性があります。

ですから、お母さんのお金を、A子さんが扱えるようにしておくことはとても重要です。

一番簡単なのは、お母さんのキャッシュカードを預かること。
多くの家族はこのような対応をしていると思われます。

もちろん、お母さんが望まなければNGですし、
他の家族がいる場合は、他の家族とご相談してからにしてくださいね。
管理が、ズサンになると後でトラブルの元です。

金融機関によっては、お母さんが代理人の届けをすると、A子さんが代理人カードというキャッシュカードをもつことができる場合もあります。

そうすれば、生活費や医療費などの日常レベルのお金のやり繰りはA子さんができるようになります。

定期預金も解約しておくといいでしょう。
イザというとき、定期のままだと解約が大変ですので。

大きなお金が必要なときは?

例えば施設に入所する際、500万くらい必要な場合があるかもしれません。
そうすると、キャッシュカードを保持することや代理人カードでは対応できないことも。

その場合は、「成年後見制度」を使うことが考えられます。

成年後見制度とは、ひとことで言うと、その人の「保護者」をつける制度です。

判断力がなくなり、お金のやり繰りや施設入所の手続きなどが
自分でできなくなった人に代わって、別な人(保護者のような人が)が正式に手続きを代行できるようにする制度です。

家庭裁判所に申し立てして、後見人などをつけてもらいます。

ただ、お母さんの後見人にA子さんが選ばれるかはわかりません。

お母さんが、A子さんに将来、後見人になって欲しいというご希望がある場合はどうしたらいいか?

お母さんが元気なうちなら(←これ重要)、A子さんを後見人に「予約」しておく手続きがあります。

「任意後見」と言います。公証役場で予約の手続きをします。
(公証役場で、お母さんとA子さんが、任意後見契約を締結します)

道筋を一緒に考えましょう

多くの人は、後見制度を利用しなくても、キャッシュカードや代理人カードで対応できると思います。

しかし

・大きなお金を動かす場合
・不動産の売却などをする場合
・他の家族が亡くなり、相続の手続きが必要な場合

などは、成年後見や任意後見が必要になることが多いです。

また、

・不動産などをもっている
・会社を経営している

と、いった人は、認知症になってしまうと、不動産管理や会社経営に不自由が生じます。

そのような人は、元気なうちに(←これ重要)任意後見や、場合によっては「家族信託」※を設定しておくと安心です。

不動産管理や会社経営に支障が出ないようにするための「保険」ですね。


家族が認知症かも?
と言う状況になるといろいろ不安だと思います。

当法人では、家族が認知症かもという相談を多数受けております。
お金のやり繰りは介護の場面ではとても重要です。

きっと良い方法があると思いますので、一緒に考えていきましょう。

家族が認知症か?と言う場合、まずは、お気軽にご相談くださいね。

※ 家族信託とは、不動産などの財産を家族に託して(名義を移して)、管理運用してもらう制度です。詳しくはこのページや、当法人の代表の川嵜の著書でも、紹介しております