遺言で「争続」は防げるのか?
親が亡くなった。
相続手続きで、家族間で争う「争続」って、つらいですよね。
ネットとかで、
「遺言がないと争続になる可能性がありますので、遺言を書きましょう」
見たいな、書き込みってときどき見ませんか?
本当に
遺言がないと「争族」になるのでしょうか?
結論
「争続」になる家族は、遺言があってもなくても「争続」になる
「争続」になる家族、つまり相続のとき争うつもりの人がいる家族は、
遺言があっても、
・遺留分は請求するし
・やれ、あの贈与は特別受益だ、って言うし
・親の介護は寄与分だ、って言うし
・遺言の成立の有効性は争うし、
もう、何があっても「争続」になってしまいます。
では、遺言の効果は?と聞かれたら2つ
1つ目、遺産分割による「法定相続分」が
遺言があれば「遺留分」に、半分になる。
遺言があれば、渡したくない子どもに渡す財産を半分にできる
2つ目、預金の解約で、分割協議が不要なので、すぐ解約できる。
つまり、現金が早めに動かせるようになる。
「争続」なる家族は、「争続」になるけど、
遺言があった方がいいよね
って感じです。
ほとんどの家族で分割協議はまとまる
もちろん、「争続」になる家族は遺言はあった方がいいです。
でも、多くの家族で、遺言はなくても問題ない。
これって、多くの司法書士はわかっていると思います。
だって、相続登記するじゃないですか。
「親が亡くなりました。不動産があるので、相続の手続きお願いします」って。
その時、遺言を持ってくる依頼者って、かなり少数派。
私の肌感覚で、10件に1件もない感じです。
遺産分割協議書をつくって、そこにハンコを押してくれないケースって
ほとんどないですよね。
つまり、「争続」になって、遺産分割協議がまとまらないケースって
少なくとも僕は経験がありません。
もちろん段取りは踏みますよ。
相談を受けた相続人から、誰がどの財産を相続するか、相続人で決まっていますか?
って聞き取りして。
決まっていれば、
そのとおりの遺産分割協議書を作成する。
決まっていなければ、
どう分けるか、まずはみんなで話し合ってもらう。
このプロセスは、すっ飛ばすわけにはいかないですよね。
でも、みんなで話しがまとまらないって、ほとんどないです。
では「争続」にならない家族は遺言は不要?
いや、絶対必要な家族のパターンがあります。
ざっとあげると
・子どもがいない夫婦(独身の人も)
・配偶者が認知症
・子どもに知的障がいがいる
・父違い、母違いの子どもがいる
・そもそも相続人がいない
ざっと、この5つかな
あと、他には
・相続人に行方不明や刑務所入りの人がいる
・亡くなるときに、子どもが未成年の可能性の人
などかな。
どれも、遺産分割協議が面倒なことになりそうなケースばかりです。
子どもがいない夫婦(独身の人も)
夫が亡くなった。
子どもがいないので、相続人は、妻と、夫のきょうだい
そして、妻と、夫のきょうだいはほとんど交流がない。
こんな状態で、妻が、夫のきょうだいに、
「実印と印鑑証明書ください」
って言うんですよ。これは大変。
だから子どもがいない夫婦は、遺言は必須ですよね。
「争続」にはならないけど、分割協議が大変。
でも、遺言があれば、分割協議をしなくて良いので、妻の気持ちがとても楽だと思います。
あと、独身の人で子どもがいない人も。
相続人は、きょうだいのケースが多い
そうするときょうだいも高齢で、認知症だったりすれば、
そもそも分割協議ができない。
亡くなっていれば、代襲相続で甥や姪にいく。
ネズミ算式に、ハンコをもらう人が増えてしまいます。
ですから、遺言があれば、この苦労がなくて済みますよね。
配偶者が認知症
子どもに知的障がいがいる
これも遺言がないと大変。
認知症や知的障がいで、判断力がないと、分割協議がそもそもできません。
そのために、成年後見人をつけて
とかになると、チョー大変!
だから、分割協議をしなくて済むためにも遺言は欲しいですよね。
父違い、母違いの子どもがいる
「父には前妻との間に子がいて、その人とは交流はほとんどないんですよ」
これも遺産分割協議の心理的ハードルはかなり高いですよね。
だから、遺言があれば、少なくともハンコはもらう必要はない。
ですから、遺された人からすると、遺言があると助かると思います。
もちろん、遺留分は来る可能性はありますが、それはそれで対応するしかないと思います。
そもそも相続人がいない
これチョー大変ですよね。
相続人がいないと、銀行口座の解約、不動産の処分、誰がするの?ってことになります。
まず問題なるのは、亡くなる直前の未払い金が払えない
例えば、施設費用とか、治療費とか。
そのためには、「相続財産清算人」を裁判所に選任してもらって、
(誰が申し立てするのかも、問題)
予納金が何十万円もかかって、、、
なんて、チョーめんどくさいんですよ!
ちなみに、「イトコいるので、イトコに行くんでしょ」って言う人がいますが、
イトコは相続人になりませんから。
相続人がいない人は、遺言は必須ですよね。
相続人に行方不明や刑務所入りの人がいる
亡くなるときに、子どもが未成年の可能性の人
これも分割協議がちょっと大変。
そもそも刑務所って、どこの刑務所に入っているかわからないこともあります。
こうなると弁護士さんじゃないと探せません。
それから、印鑑証明が取れないから、刑務所長の証明書つけて、、、
って、けっこう大変です。
それから未成年の子。
分割協議できないので、「特別代理人」を裁判所から選任してもらって、、、
と、やっぱり時間とお金がかかります。
遺言があると、スムーズですね。
まとめ
今回は
遺言がないと「争続」になるか?
というテーマでお送りしました。
「争続」になる家族は、遺言があってもなくても「争続」になる
(遺言はあった方が絶対いい)
ほとんどの家族は、遺言はなくてもOK
でも、
子どもがいない夫婦とか、配偶者や子どもが判断力がないケースとかは、
分割協議が大変なので、
遺言があると、スムーズに相続手続きできます。
「争続」を防ぐ最善の方法は、普段から家族間でコミュニケーションを取る!
あいさつとか、
ありがとうとか
普段のつながりが一番の「争続」対策なのかなって思っています。