私(長男)の父(78歳)のことで、相談があります。

私の父は、会社を経営しており、私もその会社に入っています。将来は会社を継ぐ予定です。

ところが、先日、父が脳卒中で緊急入院しました。
幸い、一命は取り留めましたが、常に意識がもうろうとして、話ができる状態ではありません。

今後は私が社長となって、会社を経営していかなければなりません。

ところが、弟(二男)が「自分も子供だから、権利がある」と言い出し始めてきたのです。

どうしたらいいでしょうか?

社長を決めることができなくなる?!

かわさきかわさき

いちばん怖いことは社長を決められなくなることです。

「えっ?! そんなことが起こるのでしょうか?」

まず、株とは何かからお話しします。

一言で言います。

株とは人事権です。

繰り返します。

株とは人事権です。

株を持っている人が、社長を始め、会社の役員を決めることができるのです。

株を持っている人の判断力がなくなると、この人事権が使えなくなってしまうのです。

つまり、

・役員を決められなくなります
 ⇒ 50%超持っている場合は注意!

・書類だけつくろって、長男を社長にするとどうなるか?
 ⇒ もちろん無効です。二男が弁護士に相談に行くと、裁判沙汰にも

株の人事権を行使できないので法的に正式な手続きでは、成年後見人をつけるしかありません。

成年後見人とは、認知症などで判断力がなくなった人の代わりに、様々な事務手続きを行う人です。

一言で言うと、「代わりにハンコを押す人」です。

しかし、成年後見は、経営者がもっとも避けるべき制度なのです。


なぜ、経営者は成年後見人を避けるべきなのか

理由その1 第三者が選任される

成年後見人は10人中7人までが、弁護士や司法書士などの第三者が選任されています。
特に、資産が多い人や、親族間でトラブルがある場合は、第三者が選任されます。
弁護士や司法書士が成年後見人に選ばれることが多いです。

第三者が成年後見人になると、

・株に伴う人事権が、弁護士や司法書士などの第三者に委ねられてしまいます。
 (それまで会社には全く関係なかったのに、人事権を握ることに)
・第三者の場合、継続的に費用も発生します。
 (年24~60万円が一生続く)


理由その2 できる範囲が限られる

成年後見でできること

・普段のお金の出し入れ
・生活費、医療費、介護費の支払い
・市役所などの各種手続き


一方で、成年後見では難しいことは、

・経営的、投資的な判断
 ⇒ この設備投資をするかどうか
・財産を減らしたり、リスク的な行為
 ⇒ 相続税対策などの生前贈与
 ⇒ 自分の不動産に担保の設定
・争いがある場合の判断
 ⇒ 長男と二男、どちらを社長にするか?
 (社長本人でないので、わからない)

成年後見は、サラリーマンや主婦だった人を想定した制度です。

経営的なことや投資的なことをする人のための制度ではありません。

「家族信託」による解決方法

※ 判断力がなくなる前に、事前に設定しておくことが必要です。
 ⇒ 保険やそのほかのリスク対策と同様です。


株を後継者に信託します。(判断力があるうちに)

信託すると、人事権など、自社株の実権は、一括で後継者に移せます。
(全部の株だけでなく、一部の株だけ移すことも可能です)

<実権的>には

・確実に後継者に、会社の株を渡せます。
・実権は移りますが、先代は後継者に、自分の考えを指図もできます。
・先代が認知症になっても、会社の意思決定では問題が生じない。
 (後継者が正式に意思決定できます)


<財産的>には

・配当をもらう権利は、先代に残したままにできます。
・そうすれば、贈与税もかからず、実権のみ渡せます。
・先代が亡くなられたとき、財産権を妻や後継者に渡すようにし、そのとき相続税の対象となります。

このように、株を判断力があるうちに、後継者に信託することにより、
会社の意思決定が第三者の手に渡ることを防ぐことができます。

家族信託は、法律面のディフェンダーですね。


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