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施設に入ったら実家を売りたい(4つの方法の比較)

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2025.02.01

今回は、親の実家どうしよう、というお話しです。


1 施設に入ったら自宅を売りたい


小林タカシさん(仮名)は、85歳。

奥様は認知症で、既に施設に入っています。

2人いる子ども達は結婚して独立。タカシさんは自宅で一人暮らしです。
要介護1の認定を受けており、訪問介護(買い物と調理)のサービスを受けています。

タカシさんは、最近、物忘れをするようになり、自分の判断力の低下に不安を抱いています。

少し認知症が入り始めているかもしれません。子ども達も、タカシさんの一人暮らしに不安を感じ始めています。
タカシさんも子ども達も、近い将来、タカシさんは施設に入らなければと感じています。


そうすると自宅が空家になります。空家のままでは管理も大変ですし、老朽化も進んでしまいます。
ですから、タカシさんも子ども達も、タカシさんが施設に入ったら、自宅を売却しようと、考えています。


でも、1点問題があるのです。


2 自宅の売却手続きができるか?


自宅はタカシさん名義です。
タカシさんは少し認知症気味です。


施設に入るときにはどうなっているでしょうか?


認知症がかなり進んでしまうと、そもそも売却手続きができなくなってしまうかもしれません。


不動産を売る手続きは、重大な手続きです。家の名義を換える登記は我々司法書士が行うことが多いです。

司法書士としては、多少の物忘れくらいな らともかく、判断力がなくなった人について、売却による名義の変更登記はすることは許されません。


つまり、自宅を売りたいときは、自宅を売る手続きができなくなってしまうのです。


3 解決する方法は?


主に4つあります。
(1)売るときに後見人をつける(法定後見)
(2)子どもを予め後見人に指定(任意後見)
(3)自宅を子どもに贈与をしておく
(4)自宅を子どもに家族信託をしておく
それぞれ特徴がありますので、一つずつ見ていきましょう。


 (1)売るときに後見人をつける(法定後見)


何も対策していなかった場合の対処法です。


売るときタカシさんの判断力がないと、売買の手続きができません。

ですから、代わりに手続きする人(後見人)を裁判所につけてもらいます。
後見人は第三者が選ばれることが多いです。


1度後見人をつけると、一生、はずせません。


第三者ですから費用がかかります。平均年36万円で裁判所が決めます。

10年で360万円です。


1度の売買のために、案外、コストがかかりますね。

さらに後見人と相性が良くないと、精神的にもつらいかもしれません。(変更は不可)


(2)子どもを予め後見人に指定(任意後見)


イザというときのために、子どもを後見人に「予約」しておく方法です。


公証役場でその「予約」の契約をします。


売却するとき、タカシさんの判断力が低下していたら、予約を「実行」します。

そうすれば子どもが正式に売買の手続きができます。


ただ、予約を実行すると第三者の監督人がつきます。


メリットは、知らない第三者が後見人になることを防げること。


デメリットは監督人への報告が大変なこと。

領収書などを整理し、小遣い帳のようなものをつけ、収支と、財産の一覧を半年に1度くらい報告しなければいけません。


事務作業が大変です。

監督人にも費用が発生します。


 (3)自宅を子どもに贈与をしておく


子どもを自宅に贈与しておけば、イザ売却するとき子どもが手続きができますね。


メリットはシンプルなこと。


デメリットは、とにかく税金です。


贈与をすると贈与税がかかります。

1000万円の価値があれば、178万円程度もかかります。

「相続時精算課税」という制度を使えば、贈与税を回避できる場合もあります。


あと、名義を移すとき、不動産取得税や登録免許税が合わせて数十万円単位でかかる場合もあります。

家の評価額によります。


もう一つ問題は、自宅を売るときの「譲渡所得税」です。


もし、家を購入したときの契約書等を紛失していると、売買代金の約20%の譲渡所得税がかかる場合があります。


1000万円で売れたら、約200万円ですね。でも住んでいる人が売ったら課税されない可能性があります。


「3000万円の特別控除」という特例です。子ども達は同居をしていないので、この税金の特例が使えない可能性が高いです。


とにかく贈与は、様々な税金が問題になります。贈与する場合は税理士に相談は必須です。


 (4)自宅を子どもに家族信託をしておく


「信託」と言う形で、子どもに名義を移す方法です。

家族に信託をすることが多いので「家族信託」と呼ばれることが多いです。


売却をするときは、信託で名義を移された子どもが売約の手続きができます。

ですからタカシさんの判断力がなくても、売却はスムーズに進みます。


大きな特徴は、税金面かもしれません。


贈与で問題になる贈与税、不動産取得税は、課税されないようにできます。

不動産を売却するときの譲渡所得税についても「3000万円の特別控除」の特例も使えるんですね。


デメリットはちょっと複雑な手続きなこと。


ですから、取り扱える専門家が少ないです。それと、設定時の費用が多少かかることです。


もちろん当事務所では家族信託は取り扱っています。


当事務所での費用は自宅の評価額によりますが、全て含めて45万円くらいになることが多いようです。

(後見人をつけた場合の 1年ちょっと分です)


4 結局どうしたらいい?


子ども達が協力して親の面倒を見るつもりがあり、親のお金の管理ができるなら、家族信託。


子ども達が対立していたり、誰もお金の管理ができないなら、法定後見や、任意後見。


多少税金を払ってもいいけどシンプルにしたいなら贈与だと思います。


もちろん家族構成やご家族の状況によって、異なります。



施設に入ったら、自宅を売りたいというご希望があるなら、

状況をお聞きし、最適なプランを一緒に考えることができると思います。


お気軽にご相談くださいね。


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