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自己信託の使い方(難易度:専門家向けの内容です)
司法書士の川嵜です。
今回は久しぶりに、信託の実務のお話をしようかなと思います。
専門家向けの内容です。一般の人は難しいです。
テーマは――
**「自己信託」**です。
「自益信託」でなく、「自己信託」ですよ。
自益信託:委託者が自分を「受益者」にする信託
自己信託:委託者が自分を「受託者」にする信託
ここまで読んで、意味がわからる人向けの内容です。
※ 事例は様々な事例を組み合わせてデフォルメしています。
■■ 自己信託って何?「自分に信託する」ってどういうこと?
自己信託というのは、
委託者が自分自身に信託するという仕組みです。
「え?自分に信託するって、どういうこと?」
って思いますよね。
一般的な家族信託だと、
委託者:親
受託者:子
受益者:親(財産の利益を受ける人)
という形が多いと思います。
それに対して自己信託は、
**「自分 → 自分」**に信託する形です。
「それ、何の意味があるの?」
と思われがちですが、実は使いどころがあるんです。
私が自己信託を使ったのは、遺産分割協議の場面でした。
これまで自己信託を使ったのは、2回かな?多分・・・(思い出せないだけ?)
いずれも遺産分割協議の場面でした。
■■ 事例1:兄弟3人とアパートの相続
管理は一人、利益は三人」にしたケース
お父さんが亡くなり、相続人は兄弟3人。
相続財産はアパートが1棟。
そのアパートは、もともと兄弟のうち真ん中の1人がずっと管理していました。
ただ、お父さんは、現金はあまりない。
だから、公平に分割して、
アパートを3人で共有(各1/3)にすると管理が大変
という状況。
「管理してきた人にまとめたいけど、そのままだと他の兄弟に不公平…」
そんなご相談でした。
■■ 遺産分割協議+自己信託という組み合わせ
そこで、次のような形を取りました。
遺産分割協議
不動産はすべて、管理してきた「真ん中の兄弟」が取得
代償として自己信託を設定
取得した不動産を自己信託
受益権を3分の1ずつ、他の兄弟2人に渡す
こうすると、
・管理は1人に集中
・賃料収入は3人で分配
・将来売却した場合も、3人で分ける
という形になります。
管理は大変なので、
管理者には一定の報酬を支払う内容にもしました。
それから、兄弟がなくなった場合、次、誰が受益権を引き継ぐかもそれぞれの兄弟が自分で決める、という設定にしました。
■■ 事例2:成年後見が絡む、少し特殊なケース
もう1つは、少し特殊な事例です。
姉妹2人
下の妹に知的障害があり、上の姉が妹の成年後見人をしていると言うケース。
さらに、妹には、音信不通の子どもがいる
お父さんが亡くなって、相続財産は自宅。
妹が住んでいるので、
「この家は下の妹に使わせてあげたい」
ただし、そのまま名義を移すと、
将来、妹が亡くなったときに
音信不通の子どもに実家の名義が行くリスクがあります。
ここでも自己信託が活躍しました。
そこで、
遺産分割協議はこんな内容。
姉が、自宅を取得
その代償として、その不動産を自己信託して、受益権を妹に渡す。
そして、自己信託の中で
下の妹が亡くなったら、受益権は姉に戻る。
という形を取りました。
もちろん、
・成年後見人と被後見人の利益相反なので特別代理人の選任
・家庭裁判所の許可
といった手続きをきちんと踏んで進めています。
裁判所にも説明し、
「この形でよい」と了承を得て進めました。
公証人の先生にも、説明してOKとのこと。
確かに、妹の子には遺留分はありますが、それはお金で解決すればいい。
一度、自宅の名義が移ってしまうと、後から戻すことはほぼ不可能です。
でも、自己信託+受益権の設計にしておけば、
将来はお金で解決できる余地を残すことができます。
「最悪の形だけは避ける」
そのための選択肢として、自己信託を活用しました。
■■ まとめ:自己信託は“選択肢の1つ”
こんなふうに、
遺産分割協議+代償としての受益権
という場面では、
自己信託が使いやすいケースがあります。
信託を扱っている方にとって、
「こういう使い方もあるんだな」という
選択肢の1つとして、参考になればうれしいです。