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司法書士向けに家族信託の勉強会を開催しました
先日、久々に司法書士向けに家族信託の勉強会を開催しましたので、
その「さわり」をお伝えしますね。
※ 専門家向けに書いたメルマガの内容を編集し直したので、
専門家に向けた書き方になっています。
■■ 最近って、信託の勉強会ってあまりないよね
信託法が平成18年に改正されて、それから10年位は、家族信託(民事信託)の勉強会って結構ありました。
司法書士会や司法書士の青年会でよく開催されて、僕も講師としてお呼ばれすることが多かったです。
でも、その専門家向けの信託の勉強会も一回りして落ち着いた感があります。
となると、それ以降に合格した若手の人たちは、司法書士会などで研修を受ける機会がなくて
「実はよくわからない……」って人が結構いらっしゃると思うんですよね。
もちろん、民事信託推進センターとかではあるけど、それなりの費用もかかるし、しかも東京だから地方からは行きにくいし。
まあ、情報はお金を払って取りに行くべきだと思うけど、それでもね・・・
(僕は、東京などに、メッチャ通って勉強しました。)
一方で、一般の方からの家族信託の問い合わせは今もよくある。
ていうか、少し市民権を得てきた感じ。
いきなり「家族信託したいんですけど」って相談が来ると、慌てちゃいますよね。
しかも、最近のお客さんはAIやネットでめちゃくちゃ調べてきます。
中には僕たちより詳しいんじゃないかってくらい調べてくる(笑)。
#この前はお客さんがAIで作った資料でプレゼンされた
だから我々専門家もしっかり知識をつけておかないと、相談を受けたとき、相談者から
「大丈夫か?」
って思われちゃう。
これじゃまずいし、やっぱり、若い人に僕のつたない知識でも提供できたらいいかなって思って、
家族信託の勉強会をすることにしたんですね。
信託のプレイヤーが増えると、巡り巡って僕もうれしい。
だから、僕の知識や血と汗と涙で得た経験(笑)は包み隠さず、提供しようと思ったんですね。
■■ 信託の本質:所有権を「ハンコ」と「お金」に分ける
法律の条文ではあまり書いていない、信託の本質的な部分。
僕は法学部出てるわけじゃない(理工系出身です!)から、法律論はムリなので、その点はご了承ください。
実務の思想でお話しします。
所有権の要素を大きく分けると、2つの要素があります。
1.その財産を管理・処分する権限(ハンコの権限)
2.その財産から上がる経済的利益をもらう権利(お金の権利)
例えば不動産を例にすると
「ハンコの権限」って、不動産を売却したり、人に貸したりする権限ですよね。所有者が決める。
「お金の権利」って、不動産を売ったら代金をもらえるし、人に貸したら賃料がもらえる。所有者が経済的利益を得ますよね。
民法の大前提では、この「ハンコの権限」と「お金の権利」は不可分、つまり分けられません。
不動産を父から子に贈与したら
「ハンコの権限」と「お金の権利」が丸ごと
父 ⇒ 子
にいくし、売買でも丸ごと動く。これが原則です。
この二つは不可分で分けて譲渡はできません。
ところが、これを信託すると、この2つを切り離して、別々の人に渡せる。
ここが信託の本質であり、最大の強みなんです。
管理処分の権限(ハンコの権限)だけを、父から子に渡せる。子は「受託者」。
経済的利益をもらう権利(お金の権利)はそのまま父が持つ。父は「受益者」ね。
この構造が分かると、すべての条文や税金の話がスッキリ読めるようになります。
■■ 売買のとき、本人確認は「受託者」
不動産を信託すると、
民事上の所有者は「受託者」。
だから、司法書士が売買の決済で本人確認をするのは受託者です。
お父さんが後日、家族の顔もわからないくらいの重度の認知症になったとしても、受託者である子どもを本人確認すれば、何の問題もなく決済ができます。
一方で、税務上の所有者は「受益者(お金の権利を持っている人)」です。
税務署は受益者を見て課税します。
だから、最初にお父さんを委託者=受益者とする「自益信託」の形にしておけば、名義が受託者に移っても贈与税はかからないし(相続税法9条の2 第1項)、
不動産取得税もかかりません。(地方税法73条の7第1項4号ロ)
■■ 最初のうちは、扱う事例はこれだけでいい!
色々な本を見ると、後継ぎ遺贈型(受益者連続)とか、障害のある子を守る方法とかいろいろな使い方が載っていますが、最初のうちは、そんな面倒なことは考えなくていいです(笑)。
ニーズとしても多くはないです。
実務で一番よくある、事例はこれだけ。
「認知症になっても不動産を売りたい」
つまり、
親が施設に入る。実家が空き家になる。
でもそのとき親は認知症。
施設費用に充てるために家を売りたい。
だから今から備えたい。
この1点で十分です。
実家を売るとき、所有者の親が、重度の認知症になっていたら、司法書士としては登記出せないですよね。
成年後見人をつけるという方法もありますが、後見の「出口」って、一度始めたら本人が亡くなるまで終わらないから、家族にとってはものすごく重い。
(令和10年以降、改正法が施行されると、後見も終わることができる可能性があります。
あくまで「可能性」ね。
僕は後見が終わったら財産管理できなくなるから、限定的な運用になると思っています)
だからこそ、お元気なうちに信託を組んでおく価値があるわけです。
■■ 信託で一番大事なのは「出口」の意識
実務的に、信託で本当に大事なのは「作り方」ではなく「出口」です。
もう一度言いますよ。
信託で重要なのは「出口」です。
作るときは簡単なんですよ。
それっぽい契約書を作って、法務局に出せば、何でも登記は通ります。(笑)
でも、問題は「終わらせるとき(終了時)」なんです。
ここをしっかり意識して作らないと、何年か後に変な税金がかかったり、登記が通らなくて法務局から文句を言われたりして、顔面蒼白になる可能性も。
典型的な例で言うと
1.帰属権利者を遺産分割協議で決める、とか
2.終了時の受益者が兄と妹で、A不動産は兄、B不動産は妹、って決める、とか
これらって、けっこう争いがあるので、これで登記が通るかは、わからないですよ。
2の方はまだ通るかもしれないけど(贈与税が少し心配だけど)
1はかなり微妙かなって思います。
#かわさきの個人的見解
それから、委託者の地位って、相続されて(信託法147条の反対解釈)、
信託終了の際、委託者の変更登記も伴うことがよくあるので、
最悪、委託者の変更のために、「遺産分割協議」が必要になることも!?
だから、信託を「終了」させるための登記を通すのは、
ちゃんと最初に設計しておくことが、超重要!
この終了時の登記実務や、出口の具体的な設計方法については、長くなるのでまた機会があったらお話ししますね!
■■ まとめ
今回は、家族信託(民事信託)の司法書士向けの基礎講座として、実務のスタンスをお話ししました。
・AIやネットで調べてくるお客さんに、プロとしてきっちり提案できる前提知識を持つ
・信託の本質は、所有権を「ハンコの権限(受託者)」と「お金の権利(受益者)」に分けること
・最初のうちは「認知症施設入所に伴う自宅売却」の事例だけマスターすればいい
・信託の実務は、とにかく「出口(終了時)」を意識して設計することが超重要
最初の1歩は怖いかもしれませんが、前提知識を仕入れておかないと大変。
しどろもどろだと、お客さんも気づくし、「この先生、分かってないな」ってすぐ見抜かれちゃいますからね(笑)。
もし心配なら、最初の1件目は経験者と一緒にやってもらうといいと思いますよ!
それでは、今日も素敵な一日をお過ごしください。
またね、バイバイ!