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信託契約書 公正証書にする?口座はどうする? その1
司法書士の川嵜です。
今回は専門家向けの内容です。
最近、他の司法書士の先生から、
「家族信託の相談を受けたんですけど、一緒に手伝ってもらえませんか?」
と言われる機会が、少し増えてきたような気がします。
■■ 家族信託は、かなり一般にも知られるようになった
以前に比べると、司法書士会などで家族信託の研修会が開催されることも少なくなってきました。
私自身も、家族信託の研修講師として呼ばれる機会は以前より減っています。
だからといって、家族信託そのものが下火になったのかというと、私はむしろ逆だと感じています。
最近は、AIも出てきて、調べるのも簡単になりましたからね。
そんな感じで、お客様も自分で調べて
「うちの場合、家族信託がいいんじゃないですか?」
と言って相談に来られることがあります。
ときどき、AIで作ったプレゼン資料まで持ってくる方がいらっしゃいます。
「こんな感じでどうでしょうか?」って。
それくらい、家族信託という言葉そのものは一般の方にもかなり浸透してきたんだな、と感じています。
そうなると、これまで家族信託をあまり扱ってこなかった専門家のところにも相談が来るようになります。
でも、初めて扱うとなると、やっぱり不安ですよね。
そんなときに私に声をかけてもらうことがあります。
私も、できるだけそういう先生を応援したいと思っているので、一緒に案件を進めることがよくあります。
そこで、ほぼ必ず聞かれる質問が2つあります。
「信託契約書は公正証書で作った方がいいですか?」
「信託口座は作った方がいいですか?」
今回は、この二つについて、私なりの考えを書いてみます。
■■ 結論は「ケースによる」
最初に結論を言ってしまうと、公正証書についても、信託口座についても、
「ケースによる」
というのが私の答えです。(笑)
#みもふたもない
たとえば、
アパートなどの収益物件を信託するケースで、まだアパートローンが残っている場合。
金融機関との協議が必要になって、
「信託契約書は公正証書で作ってください」
「信託口座を作ってください」
と銀行から条件を出されることがあります。
この場合は、もう選択の余地はありません。
銀行との取引を続けるのであれば、その条件に従うことになります。
一方で、
・実家を家族信託したい
・親の認知症に備えて、必要なお金を少し信託したい
という程度のケースであれば、話は少し違ってきます。
■■ 公正証書で作る三つのメリット
なぜ、公正証書でつくるのか?
お金と手間をかけて、信託契約書を公正証書で作るかどうか判断するには、メリットを把握しておく必要があります。
何も考えずに、「信託契約書は公正証書でつくるもの」
とお客様に説明しては、お客様も納得しにくいですよね。
ですから、専門家として、なぜ公正証書でつくるのか(つくらないのか)は、しっかり説明できる必要があります。
私は公正証書でつくるメリットは大きく三つあると考えています。
一つ目は、公証人が委託者本人の意思確認をしてくれることです。
これは結構大きいです。
特に、少し認知機能が低下してきているケースや、家族の中に信託に反対している人がいるケース。
後になって、
「本人は本当にそんな信託をするつもりだったのか?」
という話になる可能性があります。
そんなときに、公証人という第三者が本人の意思を確認して公正証書を作成しているという事実は、一つの重要な材料になります。
私は、公正証書でつくらない場合は、後見用の診断書をとってもらい、それで代替することもあります。
本人の認知機能を医師が専門的な立場から確認してくれるので、
判断能力を裏付ける証拠としては、むしろそちらの方が強いと考えています。
二つ目は、契約書が公証役場に保管されることです。
公正証書の原本は公証役場で保管されます。
ですから、「契約書を紛失してしまった」
というリスクを減らすことができます。
もっとも、私自身、これまで数多くの信託を設定し、信託終了の手続きもしてきましたが、
「どうしても信託契約書の原本が必要だった」
という場面は、あまりなかったと思います。
ですから、保管されるということをどこまで重視するかは、ケースによると思います。
少なくとも、親の認知症に備えて、自宅を信託するケースでは原本が必要になるケースはなかったかと思います。
三つ目は、公証人が契約内容を確認してくれることです。
もちろん、信託契約書を作る専門家自身が内容を十分に検討する必要があります。
そのうえで、さらに公証人という法律専門家の目が入る。
これは安心材料になります。
一方で、公証人は登記の専門家ではないので、私が専門家向けの研修で口を酸っぱく(笑)述べている
「委託者の条項」(終了の時、登記で大きな問題になることがあります)とか、
その他に登記で問題になってくる点は、注意してくださいね。
それに、公証人が見てくれるからといって、「お任せ」になるのも良くないです。
実際、お客さんによっては、「信託契約書を1行ずつ説明して」って言う人もいます。
最終的にお客様に内容を説明するのは、やはり私たち専門家です。
まとめると、公正証書にするメリットは、
・本人の意思確認
・契約書の保管
・契約内容の確認
この三つが大きいと私は考えています。
■■ それでも私は、公正証書にはしていないことも多い
では、家族信託なら必ず公正証書にした方がいいのか?
私は、そこまでは考えていません。
たとえば、
1億円の不動産を売買するときでも、売買契約書は普通に私文書で作ります。
1億円のお金を貸す金銭消費貸借契約でも、銀行融資であれば、通常は公正証書にするわけではありません。
(執行認諾を入れる場合は必ず公正証書ですが、それは別の効果)
そう考えると、
「信託契約だけは、必ず公正証書でなければならない」
とまで考える必要があるのかな、と私は考えます。
私の場合、実家だけを信託するような比較的シンプルな案件では、公正証書にせず、私文書で信託契約を締結することも結構あります。
■■ 自己信託も必ず公正証書というわけではない
自分が自分に信託する「自己信託」は何回か設定したことがありますが、
さすがにそのときは公正証書でつくりました。
信託法3条3号ですよね。
でもここも条文をよく読むと
「公正証書その他の書面」と書いてあり、公正証書でつくることが要件ではありません。
書面でつくることが、最低限の要件。
もっとも通常の信託契約(信託法3条1号)は、口約束でもOKですが、さすがにね。(笑)
もちろん遺言信託(信託法3条2号)も、遺言の形式に従うので、公正証書か自筆証書でOKです。
こっちも信託の内容を手書きで書くのはあり得ないので、公正証書になるでしょうね。
ということで、公正証書でつくるもの、と考えがちな自己信託ですら、
私文書でもOKということですね。
■■ 長くなったので続きは次の記事で
次は、信託口座について説明したいのですが、
ちょっと長くなってきたので、
信託口座については、次の記事で説明します。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
じゃあ、またね。